恋時雨~恋、ときどき、涙~
そして、何かを取り出して、わたしの髪の毛にそれを差したようだった。


その淡い違和感が残っている部分に触れて確認しようとした時、健ちゃんがわたしの手を掴んだ。


「触るな。取れちゃうべ」


掴まれた腕が熱かった。


ふいっとそっぽを向き夜空を見上げて、健ちゃんは何かを呟いたようだった。


でも、わたしの見る角度からは何を言っているのか、読み取ることができない。


わたしは、右隣に居た静奈の浴衣の袖を軽く引っ張った。


わたしに気付いた静奈が、目を大きくして微笑んだ。


「それ、どうしたの?」


静奈の華奢な人差指が、わたしの髪の毛を差した。


「かわいい」


〈かわいい?〉


わたしが訊き返すと、静奈はもう一度、わたしの髪の毛を指差した。


「ひまわりの髪飾り」


そう言って、静奈は、わたしの髪の毛からそれを引っこ抜いて見せてくれた。






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