JACK IN THE BOX
「さあね。空を飛んでみたかったんじゃなかったかなぁ」

「空、」

「ああ、あと少しで雲に手が届きそうだったんだ。いや、飛行機だったかな」

「セトナ様」

「鳥になれそうな気もしたし。それに、落ちたらどうなるかなっていうただの興味本意ってのもありだったかなぁ」

からかうように次々とでたらめを口にする少年に、男性は苛立ちを抑えて言った。

「セトナ様、どうか本当の事をおっしゃってください」

「本当の事?」

少年の薄茶色の瞳に攻撃的な色が現れた。歪んだ笑みが口元に広がる。

「僕は質問にちゃんと答えた。あとは君が信じるか信じないかの問題だろ?」

「セトナ様!」

「真実なんて所詮そんな物。違う?」

だって皆、信じてくれない。本当の事を話しても。

本当の気持ちを正直に言ってもまだ『本当の事を言え』って言うんだ。皆が期待してる答えと違うから。

考えて考えて考えて、そのうちに何が本当の事なのか分からなくなる。答えても答えても問い詰められて、追い詰められて、“シンジツ”の居場所が無くなるんだ。


―――本当はただ、自由が欲しかった。

ただ、受け止めて欲しかった―――


その、手の届かない自由を求めて全身に傷を負った少年は、不快そうに自分を見下ろす男性を見上げて挑発的に笑った。

「じゃあさ、何をどう言えば良い訳?何て答えて欲しい訳?教えてよ、君達の欲しい“真実”ってやつをさ」

少年は晴れた空が広がる窓の外へとゆっくり視線を移す。

「皆、自分が聞きたい事しか信じない。そうなら、真実なんて“信じるか信じないか”の問題じゃないか」

本当は違うと思うけれど。違うって、そうじゃないって思うけれど。

誰かがいつか“シンジツ”を分かってくれると、思いたい、けれど。

もう、期待して裏切られるのはうんざりなんだ……!!



羽ばたく事を許されない篭の鳥は深い傷を負い、ついに出口を探す事をしなくなった。

居場所を無くした“シンジツ”を見つけてくれる、『誰か』に出会うその日まで―――




【Fin】


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