JACK IN THE BOX
「おかげですっかり老先生に目をつけられてね。その質問をした彼が厳しい体罰を受けてから、子ども達は誰も彼と話そうとしないの」

「確かに同じ目にあうのは嫌だからな」

どちらの気持ちも分かる気がして俺も溜息をつく。ジェシカのが移ったのかもしれない。

「なのに、泣いてたって事はまた何かやらかしたのね、Mr.Flower。下手な事言うと痛い目にあうってそろそろ学習して欲しいわ」

「Mr.Flower?」

「ああ、彼のあだ名よ。花が友達みたいな子だから。花壇の隅で枯れてた薔薇の木に花を咲かせたのも彼なのよ」

へぇ、と相槌をうち、俺は窓の近くに寄って彼の出て行った中庭を眺めた。

薔薇の木の前に膝を抱えて座り、空を見上げている少年の金髪が陽の光を浴びて眩しい。

……いや、本当に眩しかったのは、彼の素直さだったかも知れない。

保身の為に妥協を覚えた自分と、体罰を受けても逃げずに真っすぐ立ち向かう彼。

羨ましいな、と俺は心の中で呟いた。



Mr.Flower。

彼が大人になってもその素直さを失わず、若くして命を散らしたと知ったのは、彼が亡くなってから十年以上経った頃の事だった。


《Mr.Flower fin》


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