深淵
 池に近づくにつれ、キョウスケの鼓動は激しくなり、自然と吐息も荒くなった。                                   

 期待と緊張がキョウスケを蝕んでいく。                                         

・・落ち着け、落ち着け!                        

 キョウスケは苛立ったようにナイフを握り締めた右手で、自分の左腕を何度も殴った。                                

 鈍い痛みが走り、キョウスケの昂ぶった気持ちを抑えた。                                 

 その甲斐あって、池がある敷地に入ったときには、キョウスケの精神は穏やかになっていた。                             

・・どこだ?どこにいる?
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