聖夜の約束

第五夜

「レイくん、出かける時はこの鍵を使って」


会社に出かける前にポトッとレイの手のひらに家のスペアキーを落とした。


「信用してくれるの?家財道具一式売り払っちゃうかも知れないんだよ?」


そんな事を言うレイだが顔はうれしそうだった。



「うん レイくんはそんな事しないって信じているし、あたしの荷物なんていくらにもならないよ?」



「夏姫さんが会社に行っている間は外で時間を潰そうと思っていたんだ」



「だめだよ?風邪を引いちゃう」


夏姫は腕時計を見た。



「いけない遅刻しちゃう」


「駅まで送っていくよ」



レイも紫のダウンジャケットを着てアパートを出た。



足早に歩く夏姫にレイは手をつなごうとは言わなかった。



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