永久色-TOWAIRO-
「あのっ!!本当に……本当に私のこと覚えていないのですか?」
「あぁ。花ノ宮だっけ?
大層な名前だけど、今のところ何にも思い出せないよ。」
そうですか。
小さく花ノ宮は呟くとそのまま押し黙ってしまった。
コンコン───
「失礼します。木之下さん。」
入ってきたのは看護師だった。
この重苦しい空気をものともせず堂々と任された仕事をこなしていく。
「明日からは部屋は移動になりますので支度をしておいて下さいね。
一時間後に食事を運びますね。
あと、お連れ様の方はそろそろ面会時間が終了になりますので。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「じゃあ、私そろそろ行きますわね。また時間のあるときに顔を出しますわ。
では、ごきげんよう。」
「あぁ。」
こうして、看護師と花ノ宮が出ていき、妙な静けさを残したまま俺は、この先のことを考えた。