完璧日本男児
『○月×日、午前8時になりました。
 ニュースをお伝えします―――』

いつもどおりの朝。
いつも通り、一人ぼっちの朝食。
父は、相変わらず家に帰って来ない。
だって、父は・・・


「あ、今日も出てる。
 お父さん大変だなぁ~。」


国会議員だから。
それも外交官。
総理大臣の側近。
海外に行きまくりで本当に毎日お忙しそうです。

私はそんな、かの外交官、
田中雄蔵(たなかゆうぞう)の一人娘、
田中みゆ、現在高校受験を控える15歳。

高校なんて義務教育じゃないんだからと思いつつ、
現実では、高校どころか、大学を出ていないと社会を生き抜くには難しい。
それを重々、かの外交官様から耳にたこが出来るほど聞かされているので、
別に勉強に興味もないし、なりたいものもないけれど、
とりあえず勉強している。

よく中2病とかで、
『何のために勉強してるか分からない』症候群ってのがあるけどさ、
私にはその勉強をしている理由すら問うたことが無い。
だって、結論は明らか。


勉強しなかったら将来苦労するから。


いい大学出ておけば、将来安定っていうわけでもないけれど、
いい大学に出ていなければ大変っていうことは、
15歳の私でも分かる。
だから塾に行き、家庭教師をつけて勉強する。
現役東大生医学部の家庭教師。
たかが、区立中学に通っている一般中学生を教えるなんてねー。

私は15歳の割には少々大人びている。
父が外交官ということもあり、
教育ママではなく、教育パパだったこともあるだろう。

父は昔から忙しい身の上だったので、
幼いころから会話は少なかった。
あるとすれば、『勉強ちゃんとしてるか?』くらい。



うわー、シュール。



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