ブラッディ アリス


声をかけてきたのは、アリスの隣に座るゾディアックでは最年長の男性。

今回の会合開催地であるタウルス国貴族代表レウム・ユグドラシルズ・セト…52歳である。

「そうか…。まぁ本番は明日だからな、あまり気難しく考えるな」

優しく…紳士的な彼は、当主として就任してから23年も経つ…。
威厳と風格を持ち、その経験からゾディアックの中ではかなり信頼されている人物だ。

業界屈指の貿易会社を仕切る彼には、長年夫を見守ってきた妻と、次期当主としてすでに定められている息子、そしてアリスと同い年の娘が一人。

そんな彼も、実はまだアリスをアベル家当主として認めきれていない。

…アリス本人も、そう思われていることは知っていた。


「レウム様、後でお席を換わってもらってもよろしいかしら?」

突然、レウムの横からアリスの様子を伺っていたルナリアが笑顔で尋ねた。

「ああ、かまわんよ。ウィッシュの挨拶が終わったらすぐにでも換ろう」

「ありがとうございますわ。…アリス、たくさんお話しましょうね」


その美しい容姿も声色も体型も…全てが母リナリアと同じ…ジェミニ国貴族代表ルナリア・マリア…34歳。

ただ一つ、リナリアと違うのは…瞳の色くらいだった。

世界最高位の医療技術と医療知識を兼ね備えたマリア家は、世界各国に病院や施設を創り、医学提供を施している。
その一方、陰で世界各地の神殿を統括しているのもマリア家で、ストレイズ神殿なども実際は国の管轄では無い。

そんなマリア家には代々『長老会』というものが確立され、ルナリアは6年ほど前にそこから当主の任命を受けた。

全てにおいて神聖なるマリア家…。
…アリスも一応…マリア家の血を受け継ぐ身である…。





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