ブラッディ アリス


ルナリアの向こう側では、細く鋭い目を光らせている男性がじっとアリスを見つめる。

彼はカンケル国貴族代表を務めるソーディル・カニエ・ビュリエント、35歳。
10歳も年下の妻と、幼い一人息子がいる。

鉱物や石油などの採取を主とする鉱業国カンケルで、世界一の油田を所持する石油会社を営み、宝石チェーン店「ヴァリア」のオーナーであるビュリエント家当主。

ソーディルが26歳のとき先代が亡くなり、即就任した彼は大変な苦労を被ったという…。

そのせいか性格は少し曲がっていて、嫌みな部分があり、表面上アリスを当主として認めていない風に見せているが…裏では若くして両親を亡くしたアリスを心配していた。


「あんまりアリスを睨まないでくださいよ。ソーディル様」

「…悪かったな。お前の大事な姫に見惚れてしまって」


横でソーディルを睨みつけるのは、レオ国貴族代表ミカエル・シーバ・クランベリ。

3年前、先代が病に倒れ、当時20歳という若さで就任。
兄が一人いるが…5年前から行方不明である。

レオ国は軍事国家であり、その国のトップに位置するクランベリ家は兵器開発や軍事物資輸入出を主に、軍事経済を司っていた。

あまり自国に固執しないクランベリ家…現状は、他国にも軍事物資を供給している。
そのためレオ国王家はクランベリ家を快く思っていなかったが、自らも軍事協力を得ている身であるため…どうにもできない状況が続いていた。


「私を敵に回さないでくれよ…ミカエル。お前の家と争いになれば、国を挙げての戦になってしまう…」

「…そう思うんだったら、アリスを敵に回さないでくださいね。こちらとしても、石油が輸入できなくなるのは痛いんですから」





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