ブラッディ アリス


「…どうした…?」

立ち止まったアリスに気づいたカイルは心配そうに駆け寄る。

「……あの…鏡……」

アリスは目を見開いて、壁に飾られた鏡を凝視している…。


「…あなた…どうかしたの…?」

澄んだ女性の声を聞きハッと我に返ったアリスは、扉の方を振り返った。

「…緊張してるのかしら?…大丈夫よ」

アリスの目線の先には、案内役だった男性たちとは別のスーツ姿の男性二人を連れた女性が一人…。

「…さぁ…席に着いて」

女性はアリスににっこりと微笑み、着席した子どもたちの前へと静かに移動した。


「…初めまして…。私の名前は、ラミア・ネネ・リトルメラ……リトルメラ侯爵家の当主です。この『スイーツホーム』の館長をしています。これから皆さんはここで、私と一緒に暮らすことになります。…よろしくお願いします」

清楚で真面目そうな女性…ラミア・ネネ・リトルメラ…。

「私のことは、気軽にラミアと呼んでください。皆さんとは本物の家族のような関係になれればと思っています」

見た感じは20代後半から30代前半くらいで、肩まで真っ直ぐに伸びたネイビーの髪が妖美に艶めいている。

「…予想以上に美人…」

カイルはラミアをじっと見つめながらニヤリと笑う。

「……若いわね…」

アリスはラミアを睨み、その後ろの鏡を見つめながら呟いた。



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