ブラッディ アリス
鏡に映る…恐らく男性だと思われる者が、静かに礼をする。
霞みがかった鏡の中で、彼の胸から上部がだんだんと浮かび上がる。
「お久しぶりですわ…。魔導師…オロバス…」
大昔、魔術師テラの手によって作られたと言われる…魔導師オロバスの宿る鏡…。
先日処刑されたシャルル夫人によれば、5年前何者かに盗まれたという話だった。
それが…ここにあるということは……。
「…シャルル夫人から…あなたを奪ったのは…もしかして…」
…リトルメラ侯爵…?
…それとも…。
「………私をベルアベスタ家から持ち出したのは……ジャックという名の男です」
「…やっぱりジャック…」
「え?あいつ?」
鏡に興味津々のカイルは、無理やりオロバスに話しかける。
「………」
「…あ…ごめんなさい。アリエスの第四王子カイルよ。私に免じて、答えてあげてもらえないかしら…?」
カイルを難しい顔で見ている無言のオロバスに、アリスは少し焦りつつヒソヒソと囁いた。