ブラッディ アリス
「……!」
ただならぬ母の雰囲気に、アリスは持っていた手帳をスッと開く。
「メモをしてはダメよ。誰かに知られるようなことがあってはいけない…。すべて、あなたの頭に入れてちょうだい。…アリス」
開いた手帳に慌てて手を伸ばしたリナリアは、アリスと目を合わせ首を横に振る。
「…わかりましたわ…」
アリスは頷きながら手帳を閉じると、それをテーブルの隅に寄せた。
「……そうね…。あなたは本当に…優秀な子に育ってくれたわ…。私の厳しい教養にも耐えてくれた…。だから大丈夫だと思うの」
今までの、娘アリスとの記憶を思い返しながら、リナリアは微笑む。
「…試練はこれからよ。…その時が来たの…。そして…選ばれたのは私じゃなくて、あなたなの……アリス…」
「……選ばれた…?」
リナリアの瞳に、目を丸くしたアリスが映る。
「そろそろだって言われたから、私はここに嫁いだのにね。…なんで大事な娘のあなたに…酷な運命を背負わせることになってしまったのか……」
リナリアはフッと鼻で笑い、立ち上がった。