ブラッディ アリス
「……アリス……、当主になったのだから……執事の一人くらい雇わないと……」
そう、運命のあの日…。
アリスは庭に立つ大きな木の木陰で、体調の良くなったナナリと、久しぶりに本を読んでいた。
「………そうね……」
懐かしい本を見つけたから…と、ナナリが持ってきたのは、本当に幼い頃…母リナリアに読んでもらった…平和の象徴のような『おとぎばなし』。
しかしアリスは、綺麗な声で本を読んでいるナナリを横目に、複雑な想いを抱いていた。
……当主に選ばれなかったナナリは…どう感じているのだろう…。
「……はぁ……」
「………大丈夫?…アリス……。…私に何かできることがあるなら……」
「…ううん……大丈夫だから。…ナナリは自分の体のこと心配して。まだ本調子じゃないんだし」
アリスはナナリに笑顔を見せ、遠く…真っ白で大きな雲を運ぶ青空を眺めた。