ブラッディ アリス
「…退屈そうだね…?」
……ザァァァッ……
突然、強風が巻き起こった。
「…きゃっ…帽子……!」
その風のせいで、飛ばされてしまったナナリの帽子…。
「…………」
数秒間、アリスとナナリは帽子を見つめる。
「…あぁ……僕が取りに行くよ……」
木の後ろから確かに聞こえた、男性の声。
アリスが振り向くと同時に、黒い足がアリスの横を通り過ぎた。
「…う……さ…ぎ……」
長い銀髪を靡かせ…頭には兎の耳…。
長身で、スタイルが良くて、タキシード姿がよく似合う…。
「…はい…。……ナナリお嬢様?」
帽子を拾ってくれた彼は、ナナリに笑顔でそれ渡し、次にアリスを見て、優しく微笑んだ。
「そして、あなたがアリス様…?…アベル家当主就任、おめでとうございます」
それが、執事ラビットとの出逢い。
その深紅の瞳に、一瞬で引き込まれた。