ブラッディ アリス
「…亡きリナリア様に、依頼状をいただいておりました。半年ほど前から…です」
突如現れた見知らぬ男を、とりあえず屋敷内に通したアリス。
少し顔を赤くしたナナリが、いそいそとお茶を用意する。
男はソファーに座るなり、一通の真っ白な封筒をアリスに見せた。
「……お母様が……依頼状…?」
アリスは封筒を受け取ると、ゆっくりとその中身を取り出した。
「まさか、受け取った数日後にお亡くなりになるなんて思ってもいませんでしたが…」
封筒の中には、一枚の真っ白な紙。
たしかに『依頼状』と書いており、母リナリアのサインと承認印が記載されている。
「…"次期アベル家当主専属執事として従事することを願い申し立てる"…」
アリスはチラッと男の顔を見た後、『依頼状』をテーブルに置いた。
「…従者登録は…?」
「もちろん。…こちらが、従者登録会員カードです」
男はスッとカードをアリスに見せる。
「…なるほど…。名前は登録していないのね…」