ブラッディ アリス
Ⅴ
「あなたはまず、この部屋にある全ての書物に目を通し、全ての内容を覚えて」
ラビを執事に迎えてから、数時間後…。
一通りの手続きを終えた後、アリスが案内したのは…アベル家や貴族界の歴史の書物が置いてある小さな書斎だった。
「…掃除とか…ではなく?」
ラビはきょとんとした顔で、アリスを見つめる。
「アベル家当主専属執事になるということは、完璧な知識がないとダメ。…それなりに学んではきてるでしょうけれど、常に目指すは120%よ」
アリスは大きな窓のカーテンを開く。
「……さすがですね…。……アリス様…」
アリスは思い切り窓を開け、部屋に風を通し、ラビの方を振り向いた。
「当然よ。…そういう教育を受けてきたの…」
そんなアリスの言葉に、フッと笑みを浮かべるラビ。
「承知いたしました。読破いたしましょう……あなた様のために…」
このときから二人は、なんとも言えない心地よさを感じていた。
唯一無二のパートナーとして…。
初めて会ったとは、思えないほどに。