ブラッディ アリス
「……本当にお綺麗ですね……アリス様…」
ラビはそう呟くと、アリスの金髪の細い束を取り、そっと自らの唇にあてた。
「変な真似はしないでよ」
「…しませんよ…。…ただ……その傷が治った暁には…ぜひ私のものになっていただきたい…」
ラビの一言にピクリと反応するアリス。
「……ほんと……あなた…正気なの?……あなたは従者、私は主…貴族よ。何を言っているか…わかってる?……ナナリにも…そんな風に何か言ったの?!」
思わず起きようとするアリスの体を、ラビの腕が静かに押さえつける。
「…ナナリ様には……『抱いてほしい』と言われました…。…私はそれに従ったまで……」
「…な…っ…」
アリスの眼が大きく見開いた。
「…何…?……なんて…?……ナナリが…なんて…?」
少しずつ、右を向いていたアリスの体が、仰向けの体勢へと戻っていく。
「…『抱いてほしい』と…。…私に…」
「……抱いて…?…あのナナリが…?」
初対面の男に…初めて会ったその日に……『抱いて』…?
「……嘘よ……」