ブラッディ アリス
「…いくら?」
静まり返る廊下の真ん中で、自分に口づけしようとする司教にアリスは尋ねた。
「いくらもらったの?キオネに」
切ない顔をしたアリスは、そっと司教の頬に手をそえる。
「ア…アリス…」
シャリオ司教の甘い表情が、微かに歪んだ。
「知ってるわ。…あの時も、キオネからお金をもらってたんでしょう?」
アリスの脳内に、過去の忌々しい記憶が甦る…。
5年前…。
当時13歳だったアリスは、幼い頃から自分を可愛がってくれたシャリオ司教に想いを
告げた。
その想いを快く受けた司教は、アリスの父であり旧友であったウィンに許しを得て、
アリスと交際を始める。
初めて恋をし、実らせた…アリス。
相手は不老で短命…そして、一回りも年上。
戸惑い迷いながらも愛し合い、そばにいられる時間だけ共にいようと誓った日々…。
だが、幸せはそう長くは続かなかった。
「まぁ…実際にお金を出してたのは…キオネのワガママに応えた侯爵ね…」
さっきまで赤らめていたアリスの顔が、普段の冷静な表情に戻る。
「アリス…何を言って…」
笑顔を保とうとするが、戸惑いを隠せない司教。
「不覚にも…あなたに久しぶりに会えた嬉しさで、自分を忘れそうになってたわ…」
アリスはゆっくりと司教の腕から離れ、2・3歩後ろへ下がる。
「私はあの頃とは違う。あなたを愛したアリスは…もういない」