ブラッディ アリス
「…うっ!」
カイルは思い切りアリスを壁に押しつけ、スーツの胸元からナイフを取り出した。
「アリスを僕のコレクションの一つにしちゃえば…この異常な病気は治るのかもしれない…。…ねぇ……このまま殺しちゃってもいい?…」
ナイフの刃に映る…無表情のアリス…。
カイルから香る甘い匂いが、アリスを包むように漂っている。
「……バイバイ…アリス…」
カイルはゆっくりとナイフを高く高く引き上げた。
「冗談…ですか?…それとも本気?」
自分の腕が誰かの強い力で抑えられたことに、一瞬怯えた表情を見せたカイル…。
「…お…お前が…執事…?」
…全く気配を感じなかった…
そう思いながら、カイルは真横にいるラビを凝視した。
「失礼いたしました。アベル家当主専属執事の命を受けました……ラビットと申します…」
ラビはカイルの腕をゆっくり離すと、何食わぬ顔でナイフを奪う。
「……どこが『普通の執事って感じ』なわけ?…アリス…」
カイルはさらに不満そうな顔を見せ、ラビを睨みつけた。
「…普通じゃなかったわ。サタン・トロワ出身なの。…ラビ…身支度が早いわね」
アリスは足早にカイルの横を通り過ぎると、螺旋階段へと向かった。
「着替えてくるわ。…ラビ……カイルにお茶と、朝食を用意してあげて」