ブラッディ アリス
カイルは螺旋階段を駆け上がるアリスを見送り、ダイニングルームへと向かうラビの後をついて行く。
「……サタン・トロワ…?……ホントにあるんだ?そんなとこ」
「…あまり公言してほしくはありませんが…事実です」
「なるほどね……。そうなら説明がつくなぁ…。…アベル家に来たのは…アリスを殺すため?」
「………」
カイルの一言に、ピタリと動きを止めるラビ…。
「…図星…?」
長い銀髪を眺めながら、カイルはニヤリと笑う。
「……たった今アリス様を殺そうとしたのは…あなたですよ…?…カイル王子…」
ラビは変わらぬトーンでそう言い放つと、また歩き出した。
「…あぁ…いや…そっか…そうだよね…。頭に血が上ると…アリスに八つ当たりしちゃうんだ…昔から…」
その一言に対して何も言わず、ラビはダイニングルームへと消えていく…。
カイルは急に暗く俯くと、しばらくその場に立ったままだった。
キッチンから少しずつ調理の音が聞こえ、屋敷内には良い匂いが立ち込め始める…。
「…どうしたの?…カイル」
服を着て戻ってきたアリスが、優しくカイルの背中を叩いた。
「…あ……ごめん…。…アリス……ごめんね…」
アリスはカイルの横を通り、ダイニングルームに入る手前で振り返る。
「……?…慣れてるわ。いつものこと。……今回は何があったの?」
手招きをするアリスに、カイルは小さく微笑んだ。
「………婚約…させられた…。…王の命令で…勝手にね…」