ブラッディ アリス


「処刑場まで、同行させていただきますわ」

アリスの言葉に涙を流すと、シャルル夫人はアリスを抱きしめた。

「…?」
そのときアリスは、シャルル夫人の首に見慣れない傷があることに気づく。

「ふ…。行きましょう、お父様」
キオネは微かに鼻で笑うと、ベルアベスタ侯爵の腕を引き、先に部屋を出て行った。

「……その傷……」
アリスはシャルル夫人を見つめる。

「………」
シャルル夫人は無言で頷く。

「…そう……。あなたの娘は…本当に残酷ね…」

アリスは切ない顔をして、優しくシャルル夫人の手を引いた。





そして、長い廊下を渡り、受刑者シャルル・コクト・ナ・ラソエラは処刑場へ向かう




ストレイズ殿広場では処刑告知の鐘が鳴り始め、処刑を見学に来た好奇な民衆がさら

に賑わい始める。




処刑場までの道を、シャルル夫人が震えながら歩いていたのを知るのは…実の娘でもないアリスだけだった。





< 65 / 657 >

この作品をシェア

pagetop