ブラッディ アリス
それから結局、ラビとカイルは客間に戻り、アリスだけがシャルル夫人の元へ案内された。
「アリス…君は……」
行く途中、司教が何か言いかけたが、それ以外二人は無言で歩いた…。
「…遅いですわ!もうすぐ処刑が始まりますのに!」
扉の前で待ち構えていた不機嫌そうなキオネの声が廊下に響く。
「…申し訳ございません…」
暗い表情の司教が、一礼をして扉を開けた。
「…アリス…。お母様が……あなたも処刑場まで同行してほしい…と言ってましたわ
」
すれ違いざまにキオネが囁く。
「…わかりましたわ…。アリエス国貴族界代表アベル家当主として、処刑場まで同行
させていただきます」
アリスはキオネと目を合わさず、静かにその部屋の中へと入った。
部屋の中は数本のロウソクの火で灯され、暗くて湿っている。
中央には椅子に座り俯くシャルル夫人の姿。
その横には無表情で立ち尽くすベルアベスタ侯爵。
「シャルル夫人…」
アリスが近づくと、シャルル夫人はゆっくりと顔を上げた。
生気のない瞳…顔には涙の跡…乱れた髪…。
「…」
シャルル夫人は何も言わず、立ち上がった。