偽りロマンチカ
もしかしてっ…
「朱里っ…」
何だか胸騒ぎがして、早く教室に戻らないといけない気がして
俺はドアの方へと急いで足を進めようとする。
けれど腕を絵里に掴まれているのを忘れていた。
「航平っ…!!」
「…俺さ」
「うん…」
「俺を引っ叩く女なんてそうそう逢えないと思うんだよね」
「へ……?」
目を丸くしてきょとんとしている絵里の掴んでいる手を外すと、俺はニッコリと笑い、手をひらひらとさせながら教室を出て行く。