トラックで輝く君を
───……



シーズン入りしてすぐの大会。





やっぱり、大会の時だけはいつもの何十倍も忙しい。

この時のためのいつもの暇なのかと考えちゃうよ。





「蜜菜、ちょっといいか?」





忙しくて、みんながいるテントに戻れずにスタンドの住人になりかけの私の元に、次に100Mを控えた涼ちゃんがやってきた。





「なあに?」





部活中に、私を蜜菜と呼ぶことはないから、なんか嬉しい。





「…スタンドから見ててよ。
ずっと、俺のことだけさ。」





「…うん。」





当たり前じゃない。

今までだって、ずっと、
ここから見ていたのは涼ちゃんだけなんだから。





「最高の走りを見せるから。
それで、蜜菜に勇気を与えるよ。これから先の未来へ踏み出す勇気。受け入れる勇気。」





「うん、わかった。」





「じゃあ、またあとで。
あんまり無理すんなよ。」





涼ちゃんはそう言って、戻っていってしまった。





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