トラックで輝く君を
帰りは、拓馬と田尾さんが気をつかってくれた。



そもそもあいつらとは帰る方向違うけどな。





「蜜菜、よくなったよな。」



「涼ちゃんにそう言ってもらえると嬉しい。」



「そうか?なんか俺も照れる。」



「顔赤いし-。」



「うっせ-な。」



「あ、そうだ。…私、初めて治也のお墓参り行ってきた。」





意外だった。
まさか、初めてだったなんて。





「やっと、受け入れて進めるような気がした。
だから…もしも振り返ってたら叱ってほしいし、また前を向かせて?」



「わかったよ。」



「ずっと、トラックをかける涼ちゃんを見てるよ。スタンドからずっと。」





蜜菜はそう言って、電車の窓の外を見つめた。

日は傾いていて、街は橙色に染まっている。





「じゃあ、俺はずっとあのタータンを蹴り続けるよ。」




俺も同じ景色を見つめた。





「私、夕暮れの街が好きだな。」



「俺もだ。」










この先、なにがあっても、



俺は蜜菜のためにトラックを全力で駆け抜ける。





君が笑っていられるのなら。





「涼ちゃん、次は十秒台だね。」





ニカっと笑った蜜菜は
またね、と手を振って電車を降りていった。



俺はちょっとヒヤッとしたが、

また窓の外を見つめて決意した。










…また最高の走りを魅せてやる…





         【END】...
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