キューピットは求人誌!?
結局、私は何も言えないまま中年の男性が本屋を出て行くのを見送っているだけであった。
何だろう、この虚無感。
中年の男性のインパクトが強すぎて、鼓動が早くなっていた。
それ可笑しいだろ、と一人突っ込みをしていると途端に襲って来る羞恥心。
今までの私の言動を思い出すと、とてもじゃないが大学生のうら若き乙女の言う台詞とは思えない。
ただの馬鹿である。
このままでは不味いとギャラリーに弁解を試みようと振り向くが、時既に遅し。
あれほど沢山居たギャラリーが誰一人として見当たらず、そこは簡素な空間があるだけであった。
「…行動はや…」
自分でも注目する点がそこか、とは思うが、それくらいの早業なのだ。
おまけにかつての敵であった男性さえも居なくなっていて、私はさらに膨らむ虚無感に涙したくなる。
店員の視線が哀れみを帯びていて、私は
「ご、ごめんなさいっ」
と言い捨て本屋から全力疾走で去った。