ベンジャミンの窓辺で
年が明けて少し経ったくらいの時。

コンクールのオーディション会場でのことだった。

「では次の24番の方、どうぞ」

「はい」

いつものように、座ってからハンカチで指先を拭き、

楽譜を置いて、手をグーパァとしてみる。

大きく深呼吸して、指先で鍵盤の冷たさを感じ取る。

いつも通り。
いつも通りだった。



















「……」







―――――あたしは








止まった。





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