ベンジャミンの窓辺で
一瞬、何が起こったのかいまいちわからなかった。

(え?)

始めてだった。

一体自分が何の曲の何処を弾いているのか

それが真っ白になったのだ。


いつもほとんど楽譜を見ないあたし。

その時もまったく暗譜した状態だったはずなのに。

分からなくなった。


びっくりして、焦りながら震える手で続きを弾いた。

でも思いっきり鳴った和音は不協和音。

もう一回。
これもまた違う。

もう一回。
もう一回。
もう一回。

(え?)

え?
え?
え?



狂ったようにあたしはめちゃくちゃな和音を弾きまくった。


先生が止めてくれるまで、探し続けた。


まるで真っ暗な海の中を、必死で空気を求めてもがいていたみたいな感覚だった。





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