ベンジャミンの窓辺で
それから、あたしはピアノをやめた。

音大に進むはずだったのもやめた。

楽譜とのにらめっこもやめた。

全部全部投げ出したのだ。



でも、そうしてみて心は軽くなった。

あたしは自分が思っていたよりも、自分をぎりぎりまで追い込んでいたようだ。

大学に入って、

真衣との同居生活が始まり、

神山君との出会い、

犠牲にしてきた時間を取り戻していった。


そしてある日、

自然と



またピアノを欲している自分に気付いた。




知り合いにエレクトーンを譲ってもらい、再スタートをきった。


もうコンクールの栄冠なんていらない。

ただ音を楽しむために、

音楽を奏でるようになった。



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