ベンジャミンの窓辺で
宴会が終わり、あたしは眠りこけた真衣を担ぎながら暗い夜道でタクシーを待っていた。

掴まえようとしても、なかなかタクシーは来ない。


(歩いて帰ろうかな…)

そんなことを思った時だった。


「すみません、野崎葉月さんでいらっしゃいますか?」


「…!」

驚いて振り返ると、一人の青年が立っていた。

180以上はありそうな長身で、真衣を担いでいたあたしは、見上げなければ顔が見えなかった。


「は…はい…」


(何!?ストーカー!?痴漢?いや…何よ!??)


「突然ごめんなさい。自分はこのようなものです」

男は名刺を取り出して、あたしに差し出した。

《西園寺 蒼》

「さいおんじ…あおいさん?」

「あおいと書いて、そうと言います」

「さいおんじ そうさん…あのあたしに何か…てゆかなんで、あたしの名前?」


「そうですね、ここだとなんですし。お連れ様も一緒に御家までお連れしますよ。どうぞ、あちらの車へ」



彼が差し出した手の先には、何故か真っ白なベンツ。

そしてその後ろには3台の黒い普通車がお供するように止まっていた。



< 8 / 52 >

この作品をシェア

pagetop