ベンジャミンの窓辺で
普通こんな真夜中に、知らない男に車に乗れなんて言われて、素直に従うなんて馬鹿でもしないだろう。

いきなり連れ去られてうんたらかんたらされたら…!??


あたしはぶんぶんと勢いよく首を横に振った。


「けけ結構です!!あたしたちタクシーで帰りますので!!」

「卑しいことは一切しません。信じがたいかもしれませんが、神に誓って指一本ふれないと約束します」


深々と頭を下げられる。

押しに弱いあたし。
人に頭なんて下げられるのは正直耐えられない。


「あっ、頭上げて下さい!!その…絶対何もしないですか?」

「はい」


(まぁこれだけ目立つベンツなら、強姦なんて出来ないかな…)


「じゃぁ…」


あたしは承諾して、白いダックスフンドみたいなそれに真衣と乗り込んだ。


中はまるでホテルみたいにきらびやかな照明、フカフカなソファー、大理石のテーブルがあって、運転席は遠過ぎて見えなかった。


「真衣!真衣ほら起きなさいよ!!」


「んーうるさい!」


真衣は起きない様子。


実質車内にはあたしと西園寺だけになった。

今まで暗がりでいまいちよく見えなかった彼の顔を見てみる。

なんだかどこかで見たことがある気がした。



「あの…なんであたしの事?」

「はい。僕の祖父が、じつはホテル経営をしていまして。ホテルGrand Eastというんですが」

「…ホテルGrand East!?」



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