オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
男は椅子の後ろで紐を持ったまま、ぼけっと突っ立っている。


あたしはそのチャンスを活かすべく、その場から猛ダッシュで逃げ出した。


周りは水中みたいに見えるけど、あたしは普通に呼吸も出来たし、腕や体に纏わりつくはずの水や水圧も感じられなくて、何だか妙な気分だった。


だけど、走れども走れども、果てがない。


これはいったいどういう事なの?


いくら走っても、海みたいな景色の出口らしいものはひとつも見つけられなかった。


イルカのデザインが施された腕時計を見ると、午後11時32分を指している。


こりゃあ、流石の加奈子先生も不審に思うだろうな。


それよりも、走ってて息が苦しくって心臓はバクバク言ってるし、わき腹も痛い。


ダメだあ、もう限界!

少しだけ休ませて。


あたしは軽く前かがみになって両膝を軽く曲げそこに両手を着くと、肩で息をしながら周りを見渡した。


何が起こるのか分かんないから、せめて姿を隠して休憩できる場所がないか探してみた。
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