オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
8
町中の全ての猫が集まったかと思えるほどの頭数が、その後に続いてきた。
少なくとも百匹はくだらない。
その猫たちはそれぞれに、枯れ葉や枝や果実や紅葉をくわえていた。
「杏子お姉ちゃん、集めてきたよ。御神木さまの種から生まれた何百本の樹たちの一部を」
博君は初めてアプレクターに触れたとき、その性質を見抜いたみたいで。
それに似たものが町内に幾つか感じられたから、ボス猫権限を使って野良猫ちゃんたちに協力してもらってたみたい。
結果的に集まったのは、御神木さまの子孫の樹の一部。
博君ってば、もしかしたらあたしより優秀かも。
落ち込みそうになる気分を叱りつけ、あたしは初めて正面から御神木さまの黒きアプレクターをはっきりと見据えた。
御神木さまの想い……
遠い時を越えた人々の紡いできた想い。
あたしがそれを想うと、全身の細胞が脈打った。
熱を帯び痺れにも似た感覚が突き抜け、あたしの中で暴れ始める。
その手綱を放すまいと、あたしは懸命に戦った。