オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
3
――4月28日の土曜日。
世間ではゴールデンウイークに入り、各観光地が賑わう毎日が始まる。
思い出を作る大切な時間。
あたしもあたしなりに、いろんな計画を立てていた訳ですが。
……だっていうのに。
「なんで祝日にまでナギの仏頂面を見てなきゃならないのよ!」
あたしは通路を挟んだ隣の席にいる依頼人さん達には聴こえないよう、肘掛けで頬杖をつきながら小声でグチった。
「それはこっちのセリフだ、黄金アタマ。
依頼人の都合を最優先にするのが契約の条件だ。
ただでさえ春の陽気で浮かれたおまえのアタマにはちょうどいい。
ゴールデンウイークで遊びとなれば、どんなバカをやらかすかわからないからな」
聴こえないように口の中だけでボソボソ言っただけなのに。
地獄耳の誰かさんは読書中なはずなのに、向かい側の席からいつもの毒舌をくらわしてくれまして。
あたしはムカッときて、やつと目を合わさないように車窓に目を向ける。
その外に広がる景色は、新緑と色とりどりの花畑。