オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
お米を炊くのに竈を使わなきゃならないけど、どうやって炊いたっけ?
キャンプの飯ごう炊さんの時はあたしの担当じゃなかったし、生まれてこの方電気炊飯器以外でお米を炊いた事がないからなぁ……。
はじめチョロチョロ中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな……だっけ?
沸騰したら弱火にして、最後は蒸らせばいいのかな。
ご飯はそれとして、後はワカメとジャガイモのお味噌汁に、漬け物に、ほうれん草のお浸しに、海苔。
今ある材料から朝食のメニューを組み立てるため、ぶつぶつと独り言を言いながら水が満タンに入った重い桶を運んでたとき。
いきなり肩と手から重みが抜けて、両腕が軽く傾いだ。
バランスを取り損ねて、あたしの体が後ろ向きに倒れそうになった刹那。
あたしの背中を、何かが支えてくれて転倒は免れた。
「大丈夫かい?」
何がなんだか把握していないあたしの耳に入ってきたのは……
マモル君の声だった。
いつもと変わらない、少し低くて太いけど。
あたしにはほっと安心できる優しい声だった。