オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】



一瞬、その力強さに押し流されそうになった。


大好きな場所。


懐かしい場所。


安心出来る場所。


だけど……



この別荘に来てから何度も見た、ナギと狩野さんの抱擁が頭をよぎった瞬間、あたしは全身と表情が強張って。


腕に力を込めてナギの体を押し返そうともがいた。


狩野さんは確かに今居ないけど、あたしは彼女の代用品じゃない。


あんな素敵な女性とあたしは比べものにならないのに、惨めさを抱きかかえたまま好きになんてされたくない!


あたしは少し意固地になっていた。


……けれど。


ナギの力はいつもより弱くて、意外なほどにあっさりとあたしは脱出出来た。


やっぱりあたしをからかっただけ!?


あたしは少々頭に来て、毒舌に対する戦闘態勢を整えた。


「ちょっとナギ、いくら狩野さんがいないからって……!?」


あたしが腰に手を当てながら近づいても、ナギからは毒舌も、あたしをバカにした笑みもない。


むしろ、頭をうなだれて静かすぎるほどだった。


< 791 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop