オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
一瞬、その力強さに押し流されそうになった。
大好きな場所。
懐かしい場所。
安心出来る場所。
だけど……
この別荘に来てから何度も見た、ナギと狩野さんの抱擁が頭をよぎった瞬間、あたしは全身と表情が強張って。
腕に力を込めてナギの体を押し返そうともがいた。
狩野さんは確かに今居ないけど、あたしは彼女の代用品じゃない。
あんな素敵な女性とあたしは比べものにならないのに、惨めさを抱きかかえたまま好きになんてされたくない!
あたしは少し意固地になっていた。
……けれど。
ナギの力はいつもより弱くて、意外なほどにあっさりとあたしは脱出出来た。
やっぱりあたしをからかっただけ!?
あたしは少々頭に来て、毒舌に対する戦闘態勢を整えた。
「ちょっとナギ、いくら狩野さんがいないからって……!?」
あたしが腰に手を当てながら近づいても、ナギからは毒舌も、あたしをバカにした笑みもない。
むしろ、頭をうなだれて静かすぎるほどだった。