オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
3日ぶりに見たナギは、月の光を浴びてた。
芦毛馬がそばで座り込んでいて、ナギはその馬体に凭れかかってる。
……なんだか
声を掛けるのを躊躇うような、神聖さというか荘厳さというか。
この世あらざる者。
そんな感じがした。
充分に知ってたはずなのに、不思議。
手を伸ばせば触れられるほど近いのに、掴めない雲みたい。
……いつかかき消えてしまう霧のような。
そう思った刹那、あたしは頭を押さえて否定した。
大丈夫!あんな大怪我したのに、こうしてピンピンしてるじゃん!
ナギこそゴキブリ並みの生命力だよ……。
あたしはそう思いながら、わざと草を踏みつける音を立てつつ近づいた。
「ほら、ご所望のおにぎりだよ!ちゃんと残さず食べちゃってね」
ナギはあたしが近づいても振り向きもしなかったから、彼のすぐ側にある平らな岩にトレーを載せようとしたら。
突然ナギの手があたしの左手を掴んだかと思うと、引き寄せられたあたしはあっという間に抱きしめられてた。