オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】



体中が心臓になったみたいに、鼓動が強く脈打ってる。


今さら、改まって訊くことが、こんなにも恥ずかしいなんて。


息が止まりそう……。


緊張したからか、体が細かく震えてきた。


切り出すために声を出そうと口を開いても、喉の奥から声が出せない。


声になる前の微かな韻ばかりが、唇からさざ波の音にかき消されてく。


どんなに勇気を持とうと自分を奮い立たせても、いつも怒鳴りつける万分の1も声にならない。


今までになく、怖かったから?


……あたしはこんなにも意気地がなかったの?


早く訊かなくちゃ、みんながおかしく思い始めちゃう。


焦ったあたしは一度ギュッと目を瞑った。


(周りは誰もいない、大丈夫……独り言だから……誰も聴いてない)


落ち着こうとして、自分にそう言い聞かせた。


大丈夫、大丈夫と。


……だけど。


あたしの体に回されたナギの腕に、より一層力が籠もって抱き寄せられた、と感じたのはその直後だった。


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