オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




「寒いのか?」


右耳のすぐそばで、ナギの囁きが聴こえた。


吐息さえ感じそうな間近で。


……ナギが初めてくれた、優しい言葉。


でも……


もしかしたら最初で最後かもしれない。


あたしは答えようとしても声にすらならなくて、代わりに喉の奥から出てきたのは嗚咽の音。


……なんで。


今さらどうして……。


そんなに優しいの!?


普通の恋をすれば出来る、未来を夢見る事さえ、あたしには許されないのに。


あたしの閉じた瞼からとめどなく流れる熱い雫は、きっとナギの腕にも落ちたんだと思う。


ナギが回した腕に力を込めて、あたしを離さなかったから。


……どうして……。



どうしてナギが死ななくちゃならないの!?



誰か教えてよ!



ナギより悪い人はいっぱいいるじゃない!!



ナギは何にも悪くない!



それどころかずっと寂しくて満たされない人生を懸命に生きて……



孤独な中でも一生懸命に戦ってきたのに!!


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