オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
9
「寒いのか?」
右耳のすぐそばで、ナギの囁きが聴こえた。
吐息さえ感じそうな間近で。
……ナギが初めてくれた、優しい言葉。
でも……
もしかしたら最初で最後かもしれない。
あたしは答えようとしても声にすらならなくて、代わりに喉の奥から出てきたのは嗚咽の音。
……なんで。
今さらどうして……。
そんなに優しいの!?
普通の恋をすれば出来る、未来を夢見る事さえ、あたしには許されないのに。
あたしの閉じた瞼からとめどなく流れる熱い雫は、きっとナギの腕にも落ちたんだと思う。
ナギが回した腕に力を込めて、あたしを離さなかったから。
……どうして……。
どうしてナギが死ななくちゃならないの!?
誰か教えてよ!
ナギより悪い人はいっぱいいるじゃない!!
ナギは何にも悪くない!
それどころかずっと寂しくて満たされない人生を懸命に生きて……
孤独な中でも一生懸命に戦ってきたのに!!