オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】



「杏子お姉ちゃん、早くおいでよ!」


博君のひときわ元気な声は、少しでも親密かと思えたあたし達の雰囲気をあっという間に振り払った。


(……せっかくのチャンスだったのに)


ナギに離れられたあたしは、博君に内心で文句を言いながら、浅瀬に近づいてきた物を見て驚いて目を丸くした。


それは、ビーチバレーや浮き輪なんかでよく見る素材の、弾力性のある丈夫なビニール素材で出来たボート。


長方形の船体は長さがゆうに5~6mはありそうで、はっきり言って三畳間より大きい広さがあった。


「これ、いったいどうしたたの?」


スカートを捲り膝の上まで海に浸かりながら訊いてみれば、狩野さんがにっこりと微笑みながら答えてくださいました。


「ちょっとだけ未来を味わって頂けるかも……ね。詳しくは内緒だけど、丈夫さや乗り心地は保証するわ」


マモル君に引っ張ってもらいながらボートによじ登ったけど、不思議なことにあたしが体重を掛けても、船体が傾いたりたわんだりするのが一切なかった。


海に遊びに来た全員が乗っても、沈みそうにないし。


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