オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
濃紺の空には金銀色の月がくっきりと浮かび上がっていた。
満月の輝きが眩く、夜というのに青白い世界にははっきりと影が形作られる。
……悔いなどしない。
自分なりに懸命に生きたつもりだった。
所詮は3歳の頃に母親に殺され、無くした命なのだ。
俺を想う生命たちに命を与えられ、今まで生き延びられたのだから。
だから俺にすれば、瀕死の動物達に生命を分けるのは当然の行為なのだ。
潮の香りに包まれながら、岩に囲まれた砂浜に佇む。
風も凪いで穏やかな海は、磨き上げた鏡面の如く月を映していた。
俺の心も、そのつもりだ。
何にも動じず、そのまま泡沫のように消えゆく運命に従うつもりだった。
……だが……。
目をつぶれば
思い浮かぶのは
あいつだった。
そのたびに、心が波立つ。
平静でいられなくなる。
あいつの声、表情、仕草、香り、温もり。
全てを無意識のうちに求めてしまっていた。