オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
俺は数分後、逆方向の特急に乗り込んだ。
もちろん帰りとは全く違う線だった。
「……本当にいいの?」
隣に座っていた狩野が、サングラスを僅かに下げて俺を見た。
「ああ、これでいい」
俺は視線をまっすぐに見据えながら、揺るぎない決意で言い切った。
電車内で発車を告げるアナウンスとベルが聴こえ、滑るように景色が後ろへ流れ始めた。
杏子達がいる特急より10分早く発車するその電車で、俺は皆の前から姿を消した。
それが半月前の事だった。
俺は今、知らない土地で朽ち果てるのを待っていた。
だが、後悔はしない。
心残りは親父だが、親父には産土探偵事務所の収入や産土本家から得た金で貯めた預金を遺してある。
恐らく一生食うに困らないだろうし、いざとなればなんとかしてもらえるようマモルに頼んである。
マモルには俺の死後に手紙が届くよう手配してある。
あいつにも感謝しなくてはならないな。