オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
横文字だらけの専門用語ひとつ取っても、あたしには解らないのに、それが次から次へと出てくるとなれば、お手上げに決まってます。
まるっきり異国語を交わしてるようにしか聴こえない。
「杏子さん、ずっと黙ったままですが、気分でも悪いのですか?」
あたしにそう声を掛けたのは、よりによってあの赤石だった。
穏やかそうな顔を、ほんの少し心配そうに曇らせながら。
気分が悪いんじゃなくて、チンプンカンプンだから黙ってるだけでしょ!
余計な気を回すヒマがあったら、麗子のご機嫌でも取りなさいよ、しっしっ!
あたしは心の中で赤石に手を振りながら、またあっかんべぇをしてた。
《……相変わらずだね》
……え!?
どういうこと?
今、そばで囁かれるほど近くから、赤石の声が聴こえた……?
「同じ秘書同士、困ったことがあれば遠慮なさらないで下さいね。
いつでもお力になりますから」
赤石はにっこり笑いながらそう言ったけど、その笑顔にあたしはなぜかまた既視感を感じた。