オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




エレベーターが降りていても、あたしは直ぐそばにいるお父さんよりも、さっき見たナギの様子が気になって堪らなかった。


ナギ、なんであんな顔をしたのかな?


どうしてあたしにそんな目を向けるの?


今朝の彼から見れば、そんな表情をする理由が見当たらないのに。


気持ちは確かめられたと思った、それは間違いないけど。


あたしは自分の考えに夢中になっていて、気まずそうなお父さんとの距離も空気も気にならなかった。


エレベーターは順調に降りて、1階ごとに数秒で通過する。


1分も経たずに24階のランプが点灯したとき……


―ドクン―


急に目の奥が熱くなり、全身の細胞が脈打った。


ちりちりと暴れだす、いつまでも慣れないその感覚。


そんな時、あたしは耐えるのではなく、身を委ねる事で一体化する方法を編み出してた。


研ぎ澄まされたあたしの感覚が、エレベーターの周りのアプレクターをハッキリと捉えた。


だけど、意外な光景が視えた。


それは紛れもなく、生命溢れる海底の光景だったから。


< 927 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop