オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
それからは、スローモーションみたいだった。
赤い車があたしを跳ね飛ばす前にハンドルを切ってブレーキを踏んだらしく、タイヤが耳障りな音を立てて車体が横を向いた。
だけど、車があたしに触れるか触れないかの刹那――
体に何かが覆い被さった感触があった、次の瞬間。
鈍い音がして
空と地面が反転した――。
アスファルトに叩きつけられた、と思ったけど、それにしては衝撃も痛みもなくて。
ぼんやりと顔を上げたら、生暖かい何かが頬を伝わった。
指で触ってみたその液体は、ぬるりとして、錆びた匂いがして。
赤かった――。
あたしがゆっくりと視線を戻すと、ぐったりとした青白い顔の赤石の頭から、絶えず血が流れてた。
「赤石……さん?」
名前を呼んでみたけど、反応がない。
その間に通行人が呼んでくれたらしい救急車のサイレンの音が遠く聴こえた。