オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
沈黙という名の空気が、その部屋の全てを縛り付けた。
あたしの次のひとことが、この場の空気を一変させるスイッチになり得る事実に、あたしはひどく緊張を強いられた。
……結婚。
どこか現実味のないその単語に、あたしはぼんやりと思いを馳せた。
ふつう、好きな人や恋人がいるなら、憧れて当然なもの。
だけど……
あたしは、小さな頃から夢が持てなかった。
お父さんとお母さんの結婚生活しか知らないあたしは、夫婦とは、お互いに傷つけあうものとしか認識できなかったから。
だから、純白のウェディングドレスやバージンロード、ダイヤモンドの婚約指輪に、南の島でのハネムーン、甘い新婚生活にお揃いのパジャマ。
そんなものに憧れた事は、一瞬だってなかった。
――本当に好きな人が出来るまでは。
そう……
あたしは、ナギを好きになってから変われた。
彼と共に生きて行きたかった。
彼の名字になることを夢見て、彼の隣でウェディングドレスを着る願いを抱いた。