アライブ


『あの時…子供がトラックに跳ねられたあの瞬間…まだ子供には息があった…まだ生きていた…。人気の少ない交差点だったけど、すぐにあたしが助けを呼べば…すぐに助けを呼べば助けられたかも知れない。だけどあたしは…その光景を…目の前で子供がトラックに跳ねられたその光景を前にして…ア然としてて…頭の中が真っ白になってて…状況がわからなくなって…何も出来ないで立ち尽くしていた…携帯握りしめたまま何も出来ないで…。あたしは…子供を見殺しにした…人を殺した…』


橘玲子の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。


『玲子…』


修二はそんな橘玲子を見れずにいた。


『希来夢として抹殺したかった政府的には、橘玲子を人殺しとして捕まえるには好都合だったな』


上山翔はそう言って不敵な笑みを見せた。



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