王子に姫の恋情を…
『かーなたさーん
眉間に皺がよってますよー』
奈津実は彼方の目の前で手を動かして自分の存在を気付かせる
『…あの男何なんだよ』
『あーそりゃ自分の彼女に近づかれたらいい気はしないねぇ』
私も最近由香里を取られているようで嫌になってくるし
と、続けた
『…違う、そうじゃねーよ』
『は?』
『由香里は前あの男に対して異常なほど怯えてた
それなのに今はけろっとして普通に話をしてる
…悩みを自分の中で消化してしまったんだよ、俺に相談せずに』
由香里の最初に会った時の反応からして
あいつは絶対
由香里の男嫌いに拍車をかけた張本人だと分かってはいる
『まぁあんたには相談しづらいことだろうしねぇ…』
奈津実はどこか遠いところを見ながらそう言った
『…お前は知ってんだろ?
由香里が悩んでいたこと』
『知ってるよ、何年一緒にいると思ってんの?』
フッと鼻で笑われて
彼方はカチンときた
『てめっ…『昔ばっかりこだわってると』
彼方の言葉を奈津実が遮った
『今が見れなくなるよ』
由香里は自分で消化したんだから
もうこの件に関しては何も聞かない方がいいのだろう
でも…
『…チッ』
彼方はガタッと音を立てて椅子から立ち上がると
仲睦まじく話をしている二人のもとへと歩み寄っていった