汚れた街の汚れなき天使
嘘……だろ??
だってこんなに元気じゃないか??
それがたったの一年なんてありえない!!
「大丈夫だよ。幸は…」
ドンッ!!
彼女の力とは思えないぐらいの強さで俺はソファーから転げ落ちていた。
「大丈夫な訳無いでしょ??アタシ死ぬんだから」
「死なない!!」
「慰めなんていらないから。これはもう、現実なんだよ?」
本当に辛かったのは間違いなく幸だったハズなのに……幸を失う事が恐怖だった。
隣に当たり前にいてくれる存在が消えてしまうなんて。
信じられなくて。
日に日に弱ってく幸を前に何も出来ない俺。
病院に一緒に行かなきゃ、そう思うのに現実を見つめられずに逃げてばかりいたんだ。
「なぁ海人?お前じゃ幸を守れねーよ。俺が守る!!」
親友だった啓介のライバル宣言にも立ち向かう事さえ出来ずに、ただその手を離してしまった。
「海人が悪いんじゃないよ?アタシが元気だったらずっと一緒にいれたよね?」
最後に笑顔で!とデートした日に幸はそう言った。
そんな幸にただゴメンとしか言えなくて。
きっと、俺が幸を失う恐怖なんて比べ物にならないぐらい怖かっただろうに。
少しして、啓介と幸が結婚したと聞いた。
幸の病気を受け止めて、見届ける決意をした啓介に比べて俺は自己中で最低な人間だ。
だから、彼女は作らない。
俺は誰も幸せに出来ない。
そう思っていたのに……。