KISS OF LIFE
「彩花…」

南野課長が近づいてきた瞬間、あたしと彼の間に金田くんが割って入った。

「最低ですよ」

冷たい声で、金田くんが言った。

「上司としても、男としても、あんたは最低ですよ!」

金田くんが南野課長に怒鳴った。

「もういい!」

あたしは止めた。

金田くんと南野課長が驚いたようにあたしを見る。

「もう、いいから…」

あたしは、南野課長の前にきた。

パン!

乾いた音が屋上に響いた。

誰かを殴るなんて、初めてだった。

ケータイ小説の中ではよくあるシーン――まさか、自分が経験するとは思っても見なかった。

「浮かれてた、あたしがバカでした」

南野課長が頬を押さえ、あたしを見た。

今にも泣きそうな目が、あたしを映し出している。

「課長、大ッ嫌いです!」

叫ぶように言うと、逃げるようにその場を去った。

気のせいか、南野課長の声が聞こえたような気がした。
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